2017年11月3日金曜日

週刊葛生 第七十八号 INTERRAD犬山巡検 前編

 みなさんこんばんは。博士2年のMです。


 予告通り、INTERRAD15の会議前に行われた犬山での巡検の様子をお伝えします。

 犬山には私自身も調査に行った事があり、このブログでも紹介しましたね(こちら)。


 学会自体は新潟だったんですが、日本で放散虫チャートと言えばやはり犬山、少し遠いですが巡検地として選ばれたのですね。今回は、10月20日、21日の2日間かけて有名な露頭を複数回って行きました。この前編では、1日目の様子をお伝えします。


 名古屋からバスに乗り、はじめに向かったのは、岐阜県各務原市鵜沼宝積寺にある木曽川北岸の露頭です。犬山と言いつつ、実はここは愛知県犬山市の対岸にある岐阜県側なんですね。研究者の間では、鵜沼セクションという名で知られる研究セクションです。


鵜沼セクションです!

 この写真は、鵜沼セクションの最も古い側の地層で、約2億4600万年前の中期三畳紀の前期の地層です。色が左から右へ灰色や黒から赤へ変化するのは、この時代に起きた海洋での酸素濃度の変化に対応すると考えられています。黒は酸素の乏しい環境で保存された有機物、灰色は酸素の乏しい環境で形成された黄鉄鉱、赤は酸素が十分な環境で形成された赤鉄鉱の色です。



 説明をされているのはガイドの一人、熊本大学の尾上先生です。
大きなボードや、持ち運び可能なマイクなどを準備されていました。


 さきほどの写真と同じ地層がここにも出ていますが、褶曲して灰色と黒の部分は軸のところにしか見えていません。犬山の研究も常にこのような構造変形との戦いでもあったんですね。
奥側へ凸な形に地層が褶曲しています。


 同じ鵜沼セクションの一部には、ジュラ紀の泥岩が出ていますが、その中に放散虫の化石がとても奇麗に保存されているマンガンノジュールがあるという説明も受けました。
ノジュールというのは、地層中に特殊な組成の塊が入っているような産状のものを言います。ここでは、マンガンの炭酸塩鉱物が主体のノジュールだそうです。

 こちらは、同じくガイドの愛媛大学堀先生に説明を頂きました。


堀先生(左)も長らく犬山で研究をされています。

 3人目のガイドである岐阜大学の小嶋先生があらかじめ採取されていたマンガンノジュールのサンプルを配布していましたが、良い放散虫が出るという事で、多くの参加者が受け取っていました。


 さらに鵜沼セクションの主部である赤色層状チャートを見学しました。


下から煽ってみました。

 ここでは岩石がもつ弱い磁気の研究などがされており、かつての地磁気の記録が調べられています

 また、赤いチャートに挟まる分厚い白いチャートの成因に関する話もして頂きました。
元々異なる組成なのか、堆積物が埋没後に白い部分だけ組成が変化したのか。。。


 こちらの写真は余談になりますが、赤いチャートに白い脈が配列して入っています。よく見ると、折れ曲がったチャートの層にも周囲の曲がっていない部分と同じように白い脈が配列しています。
白い脈が奇麗に配列しています。
 チャートが褶曲して固結した後に、割れ目ができて鉱物で充填されて脈ができたという事ですね。


 次に向かったのは、木曽川の東岸にある愛知県犬山市栗栖古屋敷というところです。ここには桃太郎神社という神社があり、桃太郎神社セクションという名で知られます。

 セクションまでは藪の中の道を通って行くのですが、途中水たまりを渡るところがあり、尾上先生が男気を見せて参加者をサポートしていました。
小嶋先生(奥)と尾上先生(中央)は終始様々なサポートをしてくださいました。


 さらに、ちょっとスリリングなところを通ったりします。


雨で濡れて滑るので要注意です。


 桃太郎神社セクションでは私が研究している前期三畳紀の珪質粘土岩を見学しました。


私も珪質粘土岩に関する議論にちょっと加えて頂きました。

 桃太郎神社付近にも赤いチャートが良く見られ、今回は約2億3000万年前の後期三畳紀の気候変動が研究されたセクションを見学しました。


ぱっと見では同じ見ためのチャートにも、様々な情報が記録されています。

 最後には、犬山城を見学しました。


今年の雷で粉砕された片方のしゃちほこはまだ破損しています。

 海外からの参加者が多いのですが、こういった息抜きも楽しそうでした。


天守閣から犬山市の眺めです。

 1日目はここで終了。犬山国際ユースホステルというところに宿泊しました。1700前に宿に着き、1930には夕食もすませているというホワイトっぷりでした。学会の準備のための残業時間が5時間以上は取れますね!


 次回は後編で、巡検2日目の様子をお送りします。

 それでは、ごきげんよう。さようなら。

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